6.27.2017

排気ダクトをカラーで締める

カラー、すなわち襟。ハイカラはハイカラーで昔から高襟がお洒落と見なされていた証拠。であれば現代のお洒落さん代表はカールラガーフェルドか。ほとんどコルセットのようなあの高い襟のおかげで老いが顕著に現れる首元が隠れ、当年とって84歳の後期高齢者であることを見る者に感じさせない。

温野菜大好き


連想ゲームはともかく、カラーに粗を隠し全体を引き締めて見せる効果があるのは確か。
ということで、洗面所の照明を変えるのに合わせ排気管にカラーを嵌めて見た目を向上させる小細工DIY。

我が家のキッチンシンクは一階のほぼ中央に位置するため、換気扇から延びる排気管はDK隣の洗面所を貫通して外に通じている。今にして思えばきちんとスチールのダクトパイプを被せる指定にでもしておけば良かったのだが、ここが断熱材むき出しそのまんまであるため見た目がいまいちすっきりしないし、壁に漆喰を塗る際には壁との接合部の取り回しが余りよろしくない。

ビフォー。洗面所天井を通って外に通じる排気管だが両端の壁との取り回しがいまいち

円形のパイプ周囲を漆喰で綺麗に埋めるのはなかなか難しく、養生からはみ出て断熱材についた漆喰が事あるごとにポロポロ剥がれて落ちてくる。よく見ると漆喰のアルカリに侵された断熱材の銀色の表面まで剥がれてしまっている。
これはいかにも見苦しいので、この両端にTカラーと呼ばれる接合金具を嵌めて見苦しい部分を隠す。


アフター。ビフォーとの違いはほぼ間違い探し


本体は断熱材むき出しなのはそのままだが、両端にカラーを嵌めただけで全体が引き締まって見えるようになった。
カラーの素材である無骨な亜鉛めっき鋼板はインダストリアルテイストの照明との相性もいい。最近のインテリアの流行は銅や真鍮素材でFELIXにも魅力的な真鍮の照明は数多くあったのだが、組み合わせを考えて色のないキャストアルミ素材を選んだのは正解。


照明はキャストアルミ、Tカラーは亜鉛めっき鋼板、ミラーキャビネットはステンレス

本来の機能とは関係ないお化粧でも誰も気づかない場所であっても、自分自身が満足できるのであればやる価値はある。幸せなDIYの条件は自画自賛と自己満足(何度目だこれ書くの)。



6.26.2017

洗面所照明の取り換え

適当な梱包が異国情緒あふれる

すったもんだして到着した照明器具はキャストアルミ2ピースと分厚いカバーガラス、バルブとステー、電気コードのみからなるごく単純なつくり。ていうか照明器具はそれさえあれば成立するものなので、ある程度以上の値段はほぼ意匠代と言っていい。
取り出してみた本品はマスとしての造形は(見込んだ通り)すごくいい。が、細部の詰めと製品管理が甘いのが海外のプロダクトらしいところ。製品管理の甘さとしてはカバーガラスに傷が入っていたり接着剤がガラスにくっついていたり、そして細部の詰めの甘さは背面に現れる。

ガイジンは細かいところ気にしないのね

見ての通り、電球を留めるステーのボルトがそのまんま背面に突き出している。ボルトは乱暴にねじ切られていて切り口は斜め、このままではまっすぐ取り付けられないし、無理に押し付ければ壁に穴が開いてしまう。国産メーカーでは絶対にありえないこの辺の適当さがいかにもな感じ。
まあこの程度の瑕疵は大したことはない。接着剤はシンナーで擦れば綺麗に落ちるし、背面のでっぱりはスペーサーを拵えて逃がしてやればいい。


MDF合板のスペーサー。どうせ隠れる部分だから見てくれはどうでもいいんすよ

呼んだのは以前にも何回か工事を依頼したことのある顔なじみの電気屋さん。特段腕がある訳ではないが知った顔なので頼みやすい※1。洗面所二か所とユニットバスの二か所、計四か所の照明交換を依頼すると器具をしげしげと眺めて曰く
「洋物好きですねー」
洋物か。いやどちらかといえばおじさん洋物はあまり好みじゃないんだけどなあ。だってエロにわびさびがないでしょう男も女も妙に陽気でオーイエーオーイエーうるさいし。
それはともかく、ことタイルと照明に関しては洋物はセンスもバリエーションも国産品の比ではないというのが両者を調べ倒したうえでの率直な感想。積み上げてきた歴史の長さが違うので仕方ない※2

四か所の交換工事は90分ほどで終了。電気屋さんが帰った後にスペーサーがはみ出していたり取り付けボルトが斜めに刺さっていたり角度がまっすぐでなかったりの荒っぽい仕事を自らきちんとやり直してやっと一連の照明交換イベントが終了。以前から気になっていた左右非対称性は解消しきれなかったもののかなりマシになったので、ひとまずはこれでよしとする。
ああ面白かった。


ビフォー。立方体のすりガラスの中にクリプトン球が二つずつ。この照明も決して悪くないのだが初期工事が残念。どういうわけか上下も左右も位置が揃っていない


アフター。高さはほぼ揃えたものの窓からの左右距離のズレは解消しきれず。正確には左側をあと3cm寄せる必要があるが、これ以上寄せると電気コードを引くために空けられた壁の穴が露出してしまう


フラッシュ撮影。よくあるインダストリアルライトとは似て非なる造形がお気に入り

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※1 過去のいきさつからもうエアコン工事を頼むことはないが、照明交換程度なら問題ないだろうという判断。
※2 勿論和風には和風の良さがあるが、日本人の多くが洋風生活を送るようになってまだ実質100年にも満たない。



6.25.2017

英国バースの商売っ気があまりない創作ライト屋さんとの往復書簡(メール)

58
こんにちは。お店のウェブサイトを見ました。Curved Rectangular Prismatic Bulkheadにとても興味があります。バルブのサイズは幾つですか?あとどうすれば買えますか?こちらは日本の東京です。 M


59
ハイM、このEメールで注文できるよ。送り状(INVOICE)と品をどこに送ればいいか、住所を教えてください。バルブはE27。 バート
バートへ。E27なら問題ない※1。送付先住所は以下に書きます。支払いにVISAかMasterは使える? M
欲しいライトは一つだけ?
いや二つ必要。


510
送り状添付しました。 バート


確認しました。内容OK。 M


514
バート、先日のこっちの返事のメール受信できていますか。 M
M、送り状の支払い先で構わなければ送るよ。バート
ーやっぱり口座振り込み?※2理解しました。でも日本から海外銀行の口座に送金するのは死ぬほど面倒くさい※3し時間も金もかかるんでクレカでなんとかならないかな、あるいはペイパルとか? M
うーん、クレカ番号をメールに書くのは危ないからお勧めしないな。どうしてもというならこっちに電話してクレカ番号を直接伝えてもらってもいいけど? バート

515
電話も危なくない?こっちから電話するならお店の人に言っといてもらえれば助かるけど。 M

5月18
海外送金用の口座※4の開設準備を進めています。ただ審査に最低二週間はかかるらしいのでもう少し待って、多分OKだと思うけどもし審査が駄目なら電話する。これは最後の手段。 M

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バート、そちらの口座へ振込む準備ができました。口座開設通知を添付したので、記載されているそちらの口座情報を確認できる?間違いないなら進めます。前の送り状#666がまだ有効なら。よろしく。 M

M、確認した。これで問題ないよ。 ゲイリー

66
(ゲイリー?) ゲイリー、先ほど送金した入金を確認したら送り状の住所に送って貰える? M
ありがとう、すぐ確認する。 バート

611
バート、とゲイリー、今日無事受け取りました。物は気に入ったけどバルブはE27じゃなくてB22だね!E27とB22じゃ大違い※5なんだけど!まあ何とかするわ。多分自分は最初の日本人の客※6だろうね。ともかく有難う。 M


 __________________
※1 一般的な電球サイズはE26で手元にあるLED電球もE26、E27はE26 より1㎜径が大きいので若干ぐらぐらするが付けられないことはない。

※2 商売っ気があまりないというのはこのお店、このご時世にクレカ非対応で現金払いか口座振り込みしか決済手段がないという。クレカ非対応の店なんて日本でも珍しい。まして欧米においておや

※3 海外送金はとにかく手続きが面倒で手数料も馬鹿みたいにかかる(みずほ銀行で7000円、MUFJで6000円)。最近はマネロンや資産隠しの抜け穴として海外口座を利用することに厳しい監視の目が張り巡らされていて、4年前のFATCA施行以降は海外の他人口座への送金には送金目的と送金先口座のある銀行支店の住所に受取人の個人情報(住所氏名電話番号)の申告、送金者のマイナンバーに加え収入証明書の提出まで求められる。もちろん申請には送金者本人自ら窓口に出向くことが前提条件。昔の関所の「入り鉄砲に出女」を思わせる厳しさ。

※4 最近は送金限度額を低く設定する代わりに手数料を低く審査を簡便化したサービスが各行から提供されている。今回は新生銀行のGoRemitというサービスを利用して送金。送金先が事前に申請した一か所に限られる代わりに手数料が低廉(一回2000円)で郵送のみで口座を開設できるのが売りだが、それでも専用口座の開設までに三週間を必要とした。

※5 B22バルブは海外規格としてはメジャーだが国内の照明で使われることはまずない。対応電球もリアル店舗ではまず入手不可能、6WのLED電球はAmazonでも見つからないのでAlibabaで中国から購入する他ない(2017年6月現在)

※6 わざわざバカ高い送金手数料を払い、あるいは送金用口座を開設してまで商品を取り寄せようという酔狂な客はそうそういない。というわけでここの照明がついているのはおそらく国内で我が家だけ。というひそかな自己満足




6.24.2017

家を買う人、家を作る人

マニハウスのMさんがもしS氏を友人に紹介するなら
「営業力がないから大丈夫!」
と安心させるとのこと。
確かにグイグイ来る不動産営業に辟易している人には有効な文句。ていうか普通は友人にそんな強引な営業マンは紹介できない。下手したら人間関係に影響するので。
その通り、自身の信用にかかわると思えば下手な人は紹介できない。ここで自然に紹介者による一次選択が働くため、業者を選ぶのに「知人の伝手を頼る」というクラッシックな手段は意外に有効であったりする。

閑話休題。
これに対するS氏の言い分としては「その営業力がない男の営業に引っかかったお前らは何なんだYo!(意訳)」とのことだが、はっきり言ってしまうと、自分も含めた施主がS氏を選んだのは残念ながらS氏の営業の賜物ではない。
というとS氏がますます落ち込みそうだが、ではなぜS氏が選ばれたのか。それはこれまで見てきた家とお会いした施主で分かる。自分も含めたS氏の顧客にとって家は作るものであり買うものではない、従って求めたのは家づくりのパートナーであって私にお任せくださいと見得を切る営業マンではない。みな確固たる意志をもって家づくりに取り組んだのは新築でもリノベーションでも変わりはなく、そのような人にとってはセールストークのうまさは大した意味を持たない。S氏が選ばれたのは家づくりにおける基本的な価値観を共有しパートナーとして相応しいという施主の判断の結果だろう。

逆に言えば家は買うものだと思っている人、高額な買い物は一所懸命に営業されてその結果として買うものだと思っている人、またはそういう体を取りたい人※1、一言でいえば受け身の人にとってS氏は実に相性が悪いし、営業の熱意とサービスを最重視する人、例えば月刊自家用車※2に値引き成功体験記を投稿するようなタイプの人にも全く響くところはないだろう。やる気あんの?と思われるのが関の山。

ではどんな人に向いているか。前述のとおり対話しながら家を「作る」意思がある人、また作りたい家に具体的なイメージがある人※3、自分の好みを把握できている人、ここだけは譲れないというこだわりがある人。こういった人には適合性が高いだろう。
しかしこういったタイプは少数派で、大多数の日本人にとってやはり家は出来合いを「買う」もの。そして時代のトレンドは簡便化。施主との対話という「面倒くさい」プロセスを重視するS氏の元に千客万来とはなかなかならない理由はここにある。決して営業力のせいではないのだ。

________
※1 実際はどうであるかによらず「頼まれたからOKしてあげる」という体裁にすることが癖になっている人。特に女性に多いような気がするが、この癖は損することが多いから気を付けた方がいいと思う。
※2 「トヨタA店とB店と日産のC店とホンダのD店でそれぞれ見積もりを取って一番安い車にしようと思い最初に一番安い見積もりを出してくれたホンダD店の見積もりをもって各店を回ったらトヨタA店でさらに2万円安い見積もりを出してくれてこの営業マンは自宅に何度も来てくれる熱心な人だったのでここで買うと伝えて判子持って夫婦でA店に向かう途中でたまたまトヨタE店の前を通ったので何の気なしに立ち寄って念の為A店の見積もり見せてみたらちょっと待ってくださいと奥に引っ込んだ10分後に出てきて店長の決裁が取れたのでこの値段からさらに1万円値引きしますと言われたので大逆転でトヨタE店から買うことに決定、さらに妻の一言でガソリン満タン納車と愛車セットまでサービスでゲット。息の合った夫婦の連係プレーで賢い買い物ができたと大満足です!」みたいな香ばしい投稿が毎月紙面を飾るので有名な雑誌。色んな意味で自分には理解しがたい別世界がここにある
※3 なんでもいいけどお洒落でカッコいい家にしてくれます?みたいな人もS氏にはまだ早い。S氏はこの手の漠とした問いに対しあーはいはいこんな感じでいかがでざんしょとスラスラ書いて見せられるある意味器用なタイプではなく、あなたのことを知らないのにあなたが何をカッコいいと感じるか分かる訳ないじゃないですかと真顔で答えるタイプだからだ。                      



6.15.2017

ノンアルビール主要四銘柄を飲み比べてみる

夏の夜に喉が渇いて、お茶や水じゃ物足りなくてかといって甘いものも欲しくない。
ビールが飲みたい気もするがアルコールは欲しくない。
そんなときはノンアルコールビールに限る。我が家でもワークアウトの喉の渇きをいやす定番の飲み物としてここ何年かですっかり定着。
ノンアルコールビールといえば宝酒造のバービカン(というビールとは似ても似つかぬ謎の飲み物)くらいしか選択肢がなかった昭和の昔と違い、今は各社ともそれなりにノンアルビールに力を入れていて陳列棚に並ぶ銘柄も数多い。その中でメジャーどころを飲み比べて独断と偏見でショートレビュー。


1.零ICHI (キリンビバレッジ株式会社)


一口飲むと不自然なフルーティーさが口内いっぱいに広がる。何なんだこの香料は。
炭酸も弱めかつ飲み始めてすぐに抜けてしまうので、最後の方には完全に気が抜けた謎のフルーティー水を飲み干す作業に没頭することになる。これは全然ビールじゃないなあ

評価および一言コメント:★★☆☆☆ 砂糖抜きのファンタ



2.パーフェクトフリー (キリンビバレッジ株式会社)


零ICHIと同じキリンが販売するもう一つのノンアルビール。こちらは零ICHIとはうってかわって雑味もなく、水のようにすいすい飲める。後味も何も残らない飲み口はビールというより苦みのある炭酸水といった方が近い。
美点は炭酸が最後までしっかり残るのでその点だけは若干のビールらしさが味わえるところ。とにかく喉の渇きを癒したいときはこれがいいかもしれない。水だから

評価および一言コメント:★★★☆☆ にがりを加えたペリエ



3.オールフリー (サントリー株式会社)


何だこの酸味は。苦みと酸味の絶妙のブレンド、これは胃液交じりで逆流するゲ〇そのもの。ウ〇コ味のカレーかカレー味のウ〇コか、ゲ〇味のビールかビール味のゲ〇か。この味でよく販売OKを出したねというかサントリーにはバカ舌しかいないのか?

評価および一言コメント ★☆☆☆☆ 羽目を外した学生時代を思い出す



4.ドライゼロ (アサヒビール株式会社)


炭酸強めで苦みが強く、疑似とはいえホップのような味わいもなくはない。
これまで飲んできた中では一番ビールに近い味、これならノンアル「ビール」を名乗っても文句は言われまい。難点は強い割にすぐ抜けてしまう炭酸で、最後の方になるとただの苦水になってしまうのが飲み干すのにややきつく感じる。

評価および一言コメント:★★★★☆ 禁酒中の代用品としても是非



番外編:ホッピー (ホッピービバレッジ株式会社)


これはそもそもビールを名乗ってないので番外だが、アルコール抜きのホッピーも冷やして飲めばなかなかいける。味わいは最も豊かでコーヒーを思わせる苦みとコクは個人的には嫌いじゃない。これはこれであり。

評価および一言コメント:本社は赤坂二丁目って知ってた?


6.14.2017

おろしや国一週間(9)12月13日 ペトロザボーツクその2 a walk on the lake

キジ島行きの予定はあえなく白紙となり、さてこの街を発つ夜までどうやって時間をつぶすか。カレリアホテルを出るととりあえず街の中心部に向かって歩き始める。




夢の中で見たようなシュールな風景が広がる



静かに佇む遊具が物悲しい


極寒の地を染める美しい朝焼けの中を気の向くままシャッターを押しつつ歩いた…のが災いし、講堂前の広場に辿り着く頃にはカメラ操作の為にマイナス20度近い外気に晒し続けた手が凍傷寸前。素手を晒すのであればこまめに温めながらでなければとても持たないのを忘れていた。
ここまで冷え切ってしまったらもういけない。吐息をフーフー吹きかけるとか、そういったレベルではどうしようもない。焼け石に水。
あ、これはものすごくヤバいかもと焦って見回すと丁度いい具合に一軒だけ開いているカフェが目に入る。
天祐とばかりに飛び込むと、出されたホットコーヒーで手を温める。通常であれば熱くて五秒と持てないコーヒーカップを両手で包みこむように持って十秒、二十秒、三十秒…やっと手に血が通う感覚が戻ってきた。危なかった


この一枚を撮った直後に辛抱たまらず左手のカフェに駆けこむ

街の中心部まではここからあと小一時間は歩かなければならないがさすがにその気力も萎え、かといって(田舎町にはよくあることだが)この辺で流しのタクシーは皆無。ホテルに戻ればタクシーは呼んで貰えるだろうが、それもまた面倒くさい。
もうこの近辺をうろうろして時間を潰すことに決めた。


カフェを出て左手の坂を下ればオネガ湖はもう目の前だ。




船着き場。当然クローズド

ラーダの超カッコいい四駆を発見

このクラシカルな佇まい。ランクル40のようだ
誰もいない冬の遊園地はなぜこうもリリカルに映るのか

真っ赤なウソ…じゃないアカウソ


目指したオネガ湖は…確かに、見事にかっちんこっちん。
湖面は時間が止まったように動かず、さざ波の音も聞こえない静寂を時折唸りのような音を立てて風が吹き抜けるばかり。



右見てー

正面見てー

左見てー



仕方がないので湖上を歩く。
風の音の他は何も聞こえず、動くものは何もない、
そしてほぼ色のない世界をひたすら歩く。誰もいない、誰も知らない




湖上から見た遊園地



行けども行けども何もない
引き返してくると遠くに船が固まっているのが見える



キジ島行きフェリーはあるかな

あ、多分これだ

まあこれじゃ出航できるわけないねえ


物理的にはこのまま歩いてキジ島に渡ることも出来る筈だが、さすがにそんな時間も体力もない。
静寂の世界を彷徨すること二時間あまり、さすがに疲れたので俗世に帰還…ホテルに戻ることにする。


5.28.2017

葉山の家

GWが明けた次の週末にS氏がリノベーションを手掛けた「葉山の家」の見学会が開催された、本来の見込み客ではない自分もついでにご招待をいただいたので逗子まで行ってきた。

毎度毎度思うことだが、誰もがセキュリティやプライバシーをかつてないほど意識しているこのご時世に完成直後ならともかく実際に住んでいる家を公開する(させる)のはなかなかすごいことで、その証拠に他の建築事務所でこういった事例はまず見かけない※1。施主と建築士の信頼関係なくしてはまず望めない催しだし、関係が良好であったとしても工事の切れ目が縁の切れ目というドライな顧客ならやはり承知はすまい。ビジネスライクとは程遠いS氏には似たような雰囲気の(いい意味で)ゆるい施主が集まっているのも面白いところで、他の商売と同じくベンダー/サプライヤーとクライアントが似た者同士となる傾向があるのであればやはり気取った建築士には気取った施主が、ドライな建築士にはドライな施主が集まるのだろうか。検証の為にS氏には一度HPをイメチェンしてブラックバックにやたら小さな白抜きフォント、作例は説明ゼロのフラッシュのみとしてプロフィール画像をMr.マリックのような恰好で光量抑え目で顔半分影になった斜めショットに差し替えてみた上でどういう施主が集まるか確認してみていただきたい。

それで逗子。人生二度目の逗子。電車では初めての逗子。
JR逗子駅前のバスロータリーからS氏に言われた通り3番のバスに乗車したらさんざん回り道した挙句逗子駅前に戻ってきてしまい、降りしきる雨の中を大遅刻でやっと施主Aさん宅に到着。この時点で自宅を出てから3時間余が経過。うむこれはまずい。
Aさんは鷹揚にも笑顔で出迎えてくださったものの初対面での失態に恐縮することしきり。
恐縮しながら靴を脱ぎ、
恐縮しながらリビングに通され、
恐縮しながらビールと空揚げ※2をいただき、
恐縮しながらはいお邪魔しました。

「家を見なくていいんですか(翻訳:あんた何しに来たの)」
とのS氏のナイス突っ込みに我に帰り、恐縮しながらお二階を拝見。
S氏の説明にもある通り、この家においては「小さな部屋の壁をとっぱらって大空間を作り出す」リノベーションの定番は適用しておらずむしろその逆、もとは大空間モノスペースであったところを細かく仕切り、年頃の兄弟のために二つ個室と収納を設えてやったというのが主な内容。
家族が色々ならリノベーションも色々。Aさん宅で求められていたのは広い空間よりも独立心が芽生え始めた男の子のためのパーソナルスペースと、家族一人ひとりに十分に用意される収納スペース。この一家にとっては今やリノベーションの鉄板となった「リノベーション≒広々とした空間を作り出すこと」の公式は当てはまらないのだ。
これはこれでもちろん正解、子供も自我が確立する思春期ともなれば色々と親に知られたくない秘密も出来てくるものなので、その数年間だけでもいいから(またどんなに狭くてもいいから)専用のスペースを与えてやるべきだと思う。特に男子はつるんとした顔にニキビやらヒゲやら出てきてごつごつとみるみるうちに男臭くなりいつの間にやら喉仏なんぞ出てきて声が低くなるのと合わせるようにやたらとプライバシー意識が強くなって不用意に留守中に部屋に入ろうものなら激高して何勝手に入ってんだババア〇すぞなんて聞いたこともないような乱暴な言葉で罵倒された母親が仰天して一体あの子はどうしてしまったんでしょうなんて帰宅した夫に相談したりするところまでセットではいそれは男子がいる家庭でごく普通に繰り広げられている光景なので心配いりません。

男子二人に新たに割り当てられた部屋は三畳程度と狭いながらも互いの凹凸が組み合わさる巧みな間取りで、狭さもかえって秘密基地風な趣を醸し出していて好ましい。
(個人的には子供に与えるスペースは勉強部屋としての機能性があればそれで良く、広々と豪華で快適な空間である必要はさらさらないと思う。あまりに快適な環境は子供の独立心を損なってしまいかねないし、広々としたスペースが欲しければさっさと自立して家を出て好きな部屋に住めばいいのだ。その方が健全)
この家でもS氏的定番である厚さ3cm幅20cmの極厚の杉板と室内窓、明り取りを兼ねた格子の足場はしっかりとその存在感を発揮。
アクセントとしてだけでなく換気窓としての実用性も高い室内窓は子供にとってはよき遊具にもなる(実家にこれがあったら絶対にくぐって遊んでいただろう)万能の窓で、格子足場は太い材と細い材を組み合わせて変化を出しているのが新しい試み。

玄関上部に位置する明かり取り床。太い細い太い細い太い細い太い細い

幼い頃の自分ならくぐり抜けて遊ぶであろう小窓

前述のとおり都心から相当の距離はあるものの逗子は始発駅なので朝は座り通勤も可。湘南に共通する独特のゆるい空気※3もいいし、海も山も近く風向明媚。どうせ郊外に住むのであれば思い切ってこの辺りを生活のベースにするのも大いにあり。少なくとも住みたい街ランキング上位常連の鎌倉よりは遥かに正解。※4

__________
※1 どっかのハウスメーカーで完成後の公開を条件にした一定額の値引き制度を設けているところがあるらしい
※2 唐揚げと書くのは間違い。衣をつけないで揚げる=空揚げが由来であって中国とは何の関係もなし
※3 街の空気は住人にも確実に影響を与える。ゆったりとした空気はゆったりとした人を育てるのだろう。Aさんを見ればわかる
※4 理由は行けば分かるさアリガトー!。一言でいえば、観光地になんか住むもんじゃないよ

5.06.2017

おろしや国一週間(8)12月13日 ペトロザボーツクその1 Wo, Wo is stupid

モスクワからの夜行列車は時刻通りにカレリア共和国の首都ペトロザボーツクに到着。
列車から降りるなり摂氏マイナス18度の外気で手荒い歓迎を受ける。

低温下ではバッテリ消耗が激しい。下車前にiPhoneを充電


出迎えの子供たち

星をいただく尖塔がペトロザボーツク駅のシンボル


この街を訪れたのはいうまでもなく世界遺産の木造正教会が建つオネガ湖のキジ島へのフェリーに乗るためだが、駅を出てまず向かったのはフェリー乗り場でなくその近くにあるカレリアホテルというリゾートホテル。このホテルでフェリーチケットの予約を受け付けていると聞き、日本を発つ前に予めチケットの手配をメールで依頼しておいたのだ。
朝9時にペトロザヴォーツク着、11時発のフェリーに乗りキジ島に渡り、夕方のフェリーで再び帰って来る。そのままこの街で時間をつぶし、夜9時頃の列車に乗りサンクトペテルブルクに向かう。うむ完璧なプランだ。
もっとも二回送信しても返信がないのが気になるといえば気になるが大したことはあるまい。これもロシアらしいルーズさだろう。

カレリアホテルまでは駅から約5㎞、フェリーが出るまで時間は十分あるので普段であればブラブラ歩いていくところだが、とにかく半端でなく寒いので駅前からタクシーで直行。
さすがにリゾートホテルだけあって流暢な英語を話す受付の女性従業員二人に向かってここまで来た用向き、すなわちメールで依頼しておいたフェリーチケットを受け取りたい旨を伝えるが、二人とも呆気にとられた表情のまま固まって返事がない。通じなかったかと思いもう一度繰り返すと、顔を見合わせながら困った顔で漸く口を開いた。

「フェリーはクローズしています。だって…湖が凍ってるでしょう」







あっ。





全く信じられないことだが、ことこの瞬間に至るまで湖が凍り付いていることに全く思いが寄らなかったのはどうかしているとしかいいようがない。完璧なプランどころか完璧な間抜けである。
今度はこちらが言葉を失って立ち尽くしていると、もう一人の女性が続ける。
「メールの返事はありましたか?なかったでしょう。冬は運行してませんから」
あーそうかいそうかい確かに返事はなかったよしかし君ねェやってないならやってないと返事くらいくれてもいいじゃないかねェとブツブツ独り言つも全ては後の祭り。彼らにしてみれば冬になればオネガ湖は凍るのは当たり前、そうコーラを飲めばゲップが出るっていうくらい確実(Ⓒ荒木飛呂彦)なことであって、それに思い至らないこちらの方が非常識なのだ。

受付嬢は気の毒がって親切にも電話で確認してくれたものの、結果は彼女の言葉が正しいことが裏付けられただけ。
かくなる上は仕方ない。とりあえず今晩この街を発つまでスーツケースを預かってくれないかと頼み、身軽になるとホテルを出て街へ向かって歩き出す。とにかく夜まで時間をつぶさなくては。

カレリアホテルはオネガ湖の目の前



5.04.2017

トグルスイッチをお手軽に

我が家の壁の電気スイッチを全てゾルボンヌ印トグルスイッチに交換したのは4年前の夏の日のこと。品質には何の問題もなく、パチンパチンという小気味いい感触は取り付けた日から何ら変わることはない。メカニカルキーボードや手巻き腕時計やマニュアルトランスミッションが好きという感触フェチの気がある方には自信をもってお勧めできる一品。
販売代理店のR不動産toolboxでは出張工事の手配なんかも請け負っているのだけれど、そこまで本格的にではなくてとりあえずどんなものか試してみたいとか、賃貸なのでそもそも工事が無理とかいう人にお勧めなのが最近Pinterestで見つけたこれ


一見したところは本格的なトグルスイッチ…


実はスイッチプレートを外して代わりに取り付けるだけのお手軽施工。

モナカモナカ


元のスイッチはそのままで、プレートの代わりに取り付けた箱のトグルスイッチにつながった内側の棒で間接的にスイッチを操作するというナイスアイデア。これなら電気工事士を呼ぶ必要もなく自分で工事できるし、いつでも元の状態に復旧できる。
いいねこういうの。ただオリジナルのスイッチを生かすためにトグルスイッチは当然上下でなく左右に動かすことになるのがやや不自然であるのと、構造から推測するにスイッチの感触もパチンパチンというよりはポコンポコンとしたややソリッド感に欠けるものであるかもしれない。そこはそれ、お手軽施工が本格施工に敵う筈はない※1ので割り切るしかないが、でもこういうアイデアは好きだね


______
※1 「敷くだけフローリング」が張ったフローリングには決して及ばない(双方を施工した経験から断言できる)のと同様。