10.31.2011

泥縄未満

自転車を取り巻く環境が急に厳しくなってきたというか整備されてきたというか。
チュート福田お前のせいか。え。

自転車の交通マナーの向上をめざすため、警察庁は25日、自転車交通秩序の総合対策をまとめた。歩道での歩行者の安全を確保するため、これまでは原則として「幅2メートル以上の歩道」で認めてきた自転車の通行を、「幅3メートル以上の歩道」に見直すことが最大の柱。原則として自転車を車道に走らせることで、歩行者との分離を図る。
対策では、自転車が「車両」であることを改めて徹底。「原則として車道を走る」「歩道は歩行者優先」といった原則を周知させるほか、スピードを出す場合には車道での通行を促進する。
また、自転車の安全確保に向け、通行環境の整備として「自転車一方通行」や「普通自転車専用通行帯」を活用。利用率が低いパーキングメーターは撤去し、自転車道の整備を促進していく。
悪質で危険な交通違反については積極的に検挙するなど取り締まりも強化する。指導警告票(イエローカード)や交通切符(赤切符)の交付なども実施する。
(2011年10月25日MSN産経ニュース、一部抜粋) 

いやー、いいんだけどね。一応は。
だけど…

自転車は道交法上では立派に軽車両であって歩道を走っていてはいけない。 実際、歩道走行は歩行者との衝突の危険と隣合せだ。
なのでこのような整備は基本的に歓迎すべき事なのだが…
我が国の道路事情が全くこれに追いついていないのをどうするつもりなのかと。

至るところに見られる路上駐車、店の前に堂々と長時間駐車される搬入トラック、一車線を延々と塞ぐ客待ちのタクシーの列、ドライバーの嫌がらせのような強引な追い越しに幅寄せ…
路上には自転車にとっての危険が溢れている。

この現状に何ら有効な手を打たないまま、さあこれからは車道を走れ、歩道走ったら赤切符を切ると一方的に言われても困惑するチャリダーが大半ではないだろうか。
危険を承知で普段から車道を走っているロードバイクばかりではない。これまで歩道をよたよた走っていた子連れお母さんの二人乗り・三人乗りママチャリや傘さし運転のおばちゃん自転車も、今後は一斉に車道を走らなくてはいけないのだ(まあ傘さし運転は違法だが)。

そして今後整備される「自転車通行帯」、その幅わずか37cm!

女性の肩幅にも満たないわずかな帯の中だけをこれからは走って下さいって?
どんな鬼教官だ※1

朝日新聞サイトから拝借したこの絵には嘘がある。幅37cmであれば実際はこれよりずっと細い帯となる筈だ

そんな曲芸じみた走行を、それでも上の図のような綺麗な状況で強いられるのであればまだいい。
現実は違う。
前述の通り至るところでこの走行帯を塞ぐ邪魔で危険な障害物。
それを避け、車道にはみ出て迂回しなければならない場面が極めて頻繁にあるだろう。
その都度ヨロヨロと車道に出てくる二人乗りママチャリ、
後ろを気にせず元気よく右にふくらむ怖いもの知らずの中高生…

恐らく今後自転車と自動車の接触事故は激増するだろう。
そして「悲惨な事故」が起きない限り問題の存在を認めないのがこの国の行政の常。
なので、基本的には喜ぶべき事であるにも関わらず、どうしてもそんな気にはなれないのだ。



こちら自転車先進国デンマークの首都コペンハーゲン。自転車走行帯の幅に注目(2007年1月。右手奥にはチボリ)

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※1 ちなみに自動二輪免許試験の「一本橋」は幅30cm。落ちないで渡りきる必要があるのだが結構な割合で失敗している。それと大差ない幅であると想像すれば、いかに酷な環境であるか想像がつくと思う。ちなみに平均的な体格の男性の肩幅は40-42cm程度。



10.30.2011

Bespoke house

メディアに紹介される「建築家の家」は実にカッコよく、カッコよすぎて「人が住まない方がいいんじゃないか」と思ってしまうような家が多かったりするのだが、その逆に、「人が住んで初めて足りる」という家もある。

家が完成した。だがどこか物足りない感じがする。
そうだ人が足りない、生活が足りない。
最後のピースとして施主が家主として暮らし始めて、初めて家としての完成を見る。
例えばS氏のつくる家はこちらに該当する。

それを確信したのはマニハウスにお邪魔した時、
これは正しくMさんご一家が加わって初めて完成した家だと感じた。
他の誰が入ってもマッチしない。
自分のようなひとり者が入ってもおかしいし、微妙な仲のご夫婦が入居しても恐らくしっくりとはこない。
楽しいMさんご一家の為だけに作られた家。他の誰にも合わないのだ。

そもそも、注文住宅の本義とはそういうものではないだろうか。
ギミックと工夫を凝らした家よりもクールでフォトジェニックな「作品」よりも、
ただ他の誰にも合わない、自分の為だけに作られた家。
それを我が物にする事が施主の何よりの喜びではないだろうか。

これは家が出来る前から自分の中にあったもやもやとした感覚が(あたかもイザナギの鉾から滴り落ちた雫が島となって固まったように)ゆっくりと形となって浮かび上がったものであって、初めから確固たる考えとしてあったものではない。
だがなぜS氏に家づくりを依頼したのか、今になってよく分かる。
野暮ったい家は嫌、かといって少しの隙もなく、単体で完結してしまっているような家も癪だ。
あくまで主人である自分を立てながら、ビスポークのスーツのように自分の身体にフィットする家がいい。
そういう我儘な欲求を抱えた施主がいて、それを形に出来る設計者がいたという事なのだ。


10.27.2011

今月号のpenの特集が面白い

自分の家が出来た後も、家の特集などを掲載している雑誌があるとつい手に取ってしまう。
いや家って面白いわ。


今月号のpenの特集は見ごたえあり。
「中古マンションのリノベ」に「中古一軒家リフォーム」、「古家再生」に「コンバージョン住宅」などこの手の特集における定番はきっちり抑えてあるが、どれも非常に好ましい物件ばかり。
だが表紙にもなった「温室ハウス(勝手に命名)」とドリームハウスにも出演した「日干しレンガの家」の二つの新築事例の強烈さの前にはその印象も霞んでしまう。

全面土間どころか殆ど土の上に暮らしているかのような「温室ハウス」は屋内と屋外の境界すら曖昧な文字通りのオープンハウスだが、壁の存在を感じさせないほど大きく面積が取られた窓には目隠し一つなく、恐らくプライバシーはゼロ。全面ガラスの屋根の下では真夏など耐え難い暑さだろうし、これだけ巨大なガラス面を表紙のように綺麗に保つ為に相当なメンテナンスコストが掛かるだろう事も想像に難くない。
これに住める施主の腹の括り方は半端でないなーと思ったら設計者自身の家と知って納得。
しかしそれら諸々のネガを吹き飛ばすほどの開放感は凄いの一語、毎日がキャンプだホイ状態で楽しそうだ。すごいよマサルさん。お見事。

「日干しレンガの家」は、延床面積はLWHに匹敵するほどの小さな平屋。
家の設計者は大学と共同して「現代の建築材としての日干しレンガ」の研究を長年続けていたというから学究肌が強いのだろう、施主を口説き落として「国内初の日干しレンガの家」を実現したというエピソードなんか正に研究者※1
「他のどこにもない斬新な家」を強く望んでいた施主の好みとも結局は合致し、結果オーライ大成功。


これぞ世間のイメージする「建築家の作品」というやつではないだろうか。
否定するつもりは毛頭ない。こういう斬新な提案をする設計者とそれに乗る施主が出てこないと住宅の進化発展はないのだろうから。

こういうのも好きです。でも見てるだけでお腹一杯(笑)


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※1 もしくはアーティスト。研究者とアーティストは良くも悪くもエゴイスティックなところが似ているね

10.25.2011

最も手軽に弄って楽しめる乗り物としての自転車

タイヤが潰れたら空気を入れる程度で後は乗りっぱなしの放りっぱなし、で5年も経過して真っ赤に錆び付いたら廃棄してまた新しいのをホムセンから買ってくる…というのがこの国における基本的なママチャリの扱いだからして、サイメンの新製品「ママチャリメンテのDVD」の発売については正直首を捻るところがある。
コンセプトは面白い。ただDVDを購入してまで己の手で整備しようという意欲のある人が果たしてママチャリを愛車にしているだろうかという根本的な疑念が。逆にロードバイクやMTBを既に持っていてママチャリを下駄代わりにしている人ならば、これを買うまでもなく基本的なメンテは既に知っているだろうし…うーんやはりマーケティングを間違えているような気が。
「ママチャリは安かろう悪かろうで使い捨てるもの」という巷間の風潮とそれに乗じた粗製濫造中華ママチャリの蔓延は如何なものかと思う一人としては、これが受ける世の中になって欲しいとは思う。多分ならないだろうけど。

ここんとこのDVDシリーズでは「日常メンテのABC」と「ロードバイク完全組立」が手元にあるのだが、自分の如きド素人にもわかり易い内容は非常に好ましい。今作もわかりやすさの面では期待できる。と思う。これで整備整調の楽しさに目覚めるオカーサンがいたら面白いなと。


閑話休題。
納車後ほどなくして換装したせいもあって、三代目通勤快速号のコンポーネントは割といい値段でオークションで売却する事が出来た。
納車時に値引き代わりに交付されたクーポン券とこの売却益を合算して差し引きすると、工賃を含めても1万円台半ばでコンポ一式を上位互換出来たことになる。

すごく…安いです…

少しパーツを変えただけであっさりと何十枚の福澤翁が飛んでいく四輪に比べれば、自転車のカスタマイズの費用対効果は圧倒的に高い※1。しかも最早素人が手出しする余地など皆無である自動車と違って、格段にシンプルな自転車であればそれなりに機械弄りも楽しめる。
これが面白くない訳がない。皆あれこれ弄る筈だ※2

しかしコストを掛けたら掛けたなりの効果が(ある程度は)見込める自動車やバイクとは違い、自転車のエンジンはあくまで乗り手自身。競技者ならともかく、素人があれこれパーツを換えてみたところで肝心のエンジンがそのままでは大して速くなる訳もなく…要するに自転車のカスタマイズはほとんど見た目と自己満足が全て、それはそれで楽しみ方として全然ありなのだが。


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※1 これを自動車に置き換えて、例えばスポーツカーの全輪のブレーキディスクとパッドとキャリパー、及びトランスミッション一式をそれなりのグレードの物に換装したとしたら…どう見積もっても100万円は下らない。しかし掛けようと思えば青天井にコストはかかるのは自転車の世界でも変わらず、ホイール一本20万円とかザラにあるのが怖い。
※2 街行くロードバイクを観察してみると、吊るしで乗っている人は殆どいない。皆大なり小なり手を入れて自分流のカスタマイズを楽しんでいるのが分かる。

10.21.2011

夏櫨の紅葉は早くも終盤

更に紅葉。


これが月曜の朝の様子。
で、雨の週末となった今日までに下の枝はあらかた散ってしまったという。
夏櫨の紅葉は桜の花のように短くはかない※1

反対側の窓から望む欅はまだ全然緑色なのに。この差はどうよ



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※1 はかなく散る桜を特攻兵器になぞらえたのは帝国海軍の最悪のブラックジョーク。

10.19.2011

三代目通勤快速号ロールアウト


非常に不幸な失われ方をした※1二代目通勤快速号に代わる三代目はRNC7。
一転してクロモリフレーム。

ミーハーだって?いやこういう地味なタイプの方が不届き者に目を付けられる恐れが低くなるし。
バイクでも車でも家でも、賊が本気になったら破れない鍵などない。
したがってまず「目を付けられない」事が防犯の最大の肝なのだ。
なのでフレーム色はマットブラック、メーカーロゴもつけない仕様でオーダーし、納車後にはコンポーネントも全て換装して仕様のシルバーからブラックに※2、光り物を徹底的に排除してとにかく地味に地味に。

甲斐あって、どこに停めても背景に溶け込むほど超ジミーなバイクの出来上がり。
不届き者の物色の目は、ぱっと見ではメーカー不明の安物にしか見えないこれを素通りして、その他のクローバーマークとかハートマークとかのブランドロゴも眩しいピカピカのカーボンロードに向けられる事だろう。こっち見んな。


不細工とかカブトガニとかとかく見た目が不評なアルテグラ6700のクランク、自分は結構好きだけどなあ。放っといて


もちろん防犯一辺倒で選んだわけではなく、多分に好みも入ってはいる。
コルナゴ乗りの同僚には「なんで今更クロモリを※3」と呆れられたが、こういうのも好きなんだからいいじゃん。とうの昔に第一線を退いているクロモリならモデルチェンジの波とも無縁で10年経っても古臭く見えず、飽きずに乗れるだろうという思惑もある。少し重いけど。

このペイント・イット・ブラック号なら今度こそ長く我が通勤快速として活躍できそうだ。盗まれなければ


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※1 tateフォールディングロックはあっさり破られた。注意しましょう
※2 ただ色を変える為だけに金を使うのも勿体ないので、交換ついでに105からアルテグラに。出費も地味に嵩む。
※3 パフォーマンスで選ぶならカーボン一択、譲ってもアルミ。クロモリはベテランのこだわりかオサレで乗ってるか。

10.18.2011

夏櫨さらに紅葉す

この木は下側から紅葉が進むようで、
上の方はまだ緑が残っているように見える。





…が、下方の枝はかなり紅葉が進んでいる。



ていうか、紅葉し切る前にもう下の枝から順に散り始めているってどういう事ですか。
毎朝毎晩、紅いコンキリエのような葉が
グレーのコンクリートの上にぱらぱらと散っているではないですか。
もう少し頑張ろう。



10.16.2011

GoogleMapのLWH

GoogleMapでは空き地表示のままだった我が家。
ストリートビューや空撮では相変わらずだが、この度の更新でついにマップ上では家の形が表示されるようになった。



関東からぐぐぐいっと接近していくと…



(∩´∀`)∩アッター


建坪7.5坪は地図上ではこうなる。描画は結構適当ていうかこれ隣に寄りすぎだろ


小さいなしかしw



間違いなく町内で一番小さな家。
それでも一寸の虫にも五分の魂ハウス、こうしてちゃんと地図にも掲載される。このオーソライズドな感じが何というかこう…感慨深いものがあるね。



10.10.2011

「小さな家」を建てるとは

マニハウスの夜にビールを飲みつつS氏と交わした会話。


「その後どうですか。新しいLWHの方は」

「あーそうですね、問合わせは多いんですけどねー。」
「なかなか成約に結びつかないんですよ。」

「そうですか残念ですね。早くLWHの三号を見てみたいですけど」

「何か…」

「は」

「何かLWHのNo.1とNo.2が…揃ってちょっと普通じゃない感じでしょう。なので…」
「みんな『あそこまでやらなきゃいけないのか』って思ってしまうみたいで…引いてしまうんですよ。」

え、ええええええーっ


S氏が言う「普通でない」というのは、LWH001の施主Yさんが家の調度品を、それこそトイレットペーパーホルダーの一つに至るまでこだわって徹底的に吟味して選ばれていたり、自分が壁を塗ったりタイルを貼ったりしていた事を指しているようだ。
で、「そこまでこだわらなければいけないのか」と思われてしまうと。
引くのか。そうか。


クリームソーダ大好き

言うまでもない事だが、家づくりに共通解はない。
「こうしなければならない」という事など何もない。
自分にとってどうでもいい事に無理にこだわる必要など少しもないし、細かいところは建築事務所のセンスを信じて全てお任せにしたとしても、それで満足できるのであれば正解だろう※1。自分にしたところで、この家がもう少し広ければ、もう少し体力がなかったら、あるいはもう少し資金が潤沢だったなら、壁塗りやタイル貼りを自ら手がけるという選択肢は選ばなかったかも知れない。いたずらにハードルを高くする事はない。

それも含めて、自分で考えるという事。
本当はルールがあった方が楽なのだ。
平米数や部屋数といった数値の大きさで幸福度を測る既存の価値観に巻かれてしまえば、これもまた楽なのだ。考えなくても済むから。
そこから逸脱して「自分が本当に求めるものは何か」を考えるところから小さな家づくりは始まる。

「小さな家」を作るのにルールはないが、強いて言えば、受身ではなく自ら参画する姿勢が求められる。
これは自分であれこれ設備調度を選んだり、セルフビルドを行ったりする事を意味するのではない。
そうではなくて、自分がどういう暮らしをしたいのか、何を選び何を捨てるのかを明確にして家づくりに臨む事を意味している。
大きな家ならば「何となく」で建ててしまっても何とかなるが、「小さな家」はバッファがないだけに、薄ぼんやりと出来上がってしまったらもう取り返しがつかない。フォーカスを絞り込む事が肝要だ。

分かってはいるのだが、何となくイメージはあるのだが、うまく言い現せない。形にできない。
そういう人の為に建築事務所はある。


あーマニハウスの夜で思い出した、そういえばあの時「また暑気払いやります」なんて言って結局出来ずじまいだったなー。寒気払いなんてどうかなー。なんて

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※1 だからこそ自分のセンスにあった建築事務所を選ぶのが重要だったりする。

10.09.2011

紅葉始まる

残暑の季節も過ぎ、朝晩は肌寒さを感じるようになった十月。
窓から見える欅はまだその兆しを見せないが、前面にこの春植えた夏櫨の葉は枝の先から徐々に色を変え始めている。





全て紅葉するのはいつ頃か。楽しみ

九月の取材

S氏のエントリでもあったが、九月の週末にエコガラスの取材を受ける。

我が家にはエコガラスは使っていないのだが、この新製品はまだ新築への導入事例が少ないので
エコガラスに限定せず、窓が印象的な住宅を紹介する趣旨で記事を作っているとの事。
確かに窓からの眺めは悪くない。

土曜の朝に取材に見えられたのは企画構成・カメラ・ライターの三名様、ほどなくS氏も合流して総勢四名。
自分も含めてこの小さな家に五名もの大人が集まるのは初めて。
さすがに狭いが、インタビューと撮影で上下階に分かれ並行作業でてきぱきと取材が進む。

女性のライターさんが話の途中でいきなり「まあなんて可愛らしいのあなたは」と叫ぶのでおいおいよせよこんなところでと思ったら居候が水を飲む様子を見て萌え死にしているところだったりとかのハプニングを含みつつ、昼前には一通りの取材が終了。

取材はともかく、S氏も自分もプロカメラマンの機材に興味津々。
プロに撮ってもらうとやはり一味違う画像になるのだろうか、それは楽しみだ。